マッサージの適切なスピードって?
セラピストとして研修中など、特にボディトリートメントの練習中に「もっとゆっくりでいいよ」と言われたことがある方、いると思います。
私もその一人です。
自分では結構ゆっくりでやってるつもりでも、「もっと」ゆっくりでOK(笑)。
「え、本当にこんなにゆっくりでいいんですか?!」と思いながらも、
「そうそう、そのくらい」と修正してもらい、
「そっかぁ、このくらいなのかぁ。思った以上にゆっくりだな。気をつけないと」
と学んでいく。
たしかに、逆に自分が教える立場になったときに、「もっとゆっくりでいいよ」と言っていて、結構たくさんの方が通る道なのかな、とも思います。
では、具体的にどのくらいのスピードが適切なの?というところがずっと曖昧だったのですが、最近この本を読んで少しヒントをもらいました。
『人は皮膚から癒される』、山口 創先生という方の、2016年に出版された本です。
(他に、『手の治癒力』、『皮膚という「脳」』、『子供の「脳」は肌にある』などスキンシップ効果やオキシトシンについて研究をされている方。私も気になる本がたくさんあり、次は新刊の『皮膚はいつもあなたを守ってる』を読む予定。)
ページをめくる度に、興味津々な研究の詳細や先生の考え方が次々と紹介されていて、大変興味深い内容でした。図・イラストも交え、やさしい言葉で書かれています。
さて、本題のスピードについて。
マッサージ(ボディトリートメント)についての記述がある箇所がいくつかあるのですが、まず大前提として皮膚についてのお話を少し。
・皮膚には4種類の触覚の受容器があり、それぞれ異なる物理的な性質に反応しそれを脳に送り知覚している。
・最近、皮膚にはもう一つ、性質の異なる触覚の受容器があることがわかってきて、C触覚繊維と呼ばれる。
→ 「触れて気持ちいい」、「触れた感触が気持ち悪い」といった感情と関わる神経繊維。
・このC触覚繊維が興奮するための物理的な条件がある。
→ 「触れるものの速度」と「柔らかさ」が重要な要素
はい、速度が出てきました!
速度に関しては、秒速3cm〜10cm(ピークは5cm)ほどの速度で動く刺激に対してもっとも興奮する。また柔らかさに関しては、ベルベットのような柔らかい物質に興奮する。
だから、人の手でゆっくりと手を動かしてマッサージをするような刺激に対して、興奮することになる。
なるほど!実際にイメトレのように手を動かしてみると、なんとなくイメージが湧きやすくなります。
続きです。
そして、脳では頭皮質や線条体といった、情動や自己の感覚や身体感覚に関わる部位に到達する。
またこのC触覚繊維の興奮は脳内ではセロトニン神経を活発化させることもわかっている。だから抑うつや不安の高い人にゆっくりした速度でマッサージをしてあげると、脳内でセロトニンがつくられて症状が軽くなるのだ。
実際に、著者が行った実験でも、相手の背中に秒速5cmほどでゆっくりと触れてあげると、抑うつも不安も顕著に低下した。逆に手を動かす速度が、速すぎたり遅すぎたりすると、自律神経の交感神経が優位になって、覚醒水準が上がってしまったのだ。
やっぱり、速すぎもダメだし、遅すぎもNGなんですね。
ここからが個人的に注目ポイント!さらに興味深い記述がありました。
また別の研究によると、一般的な身体部位では上記の速度が当てはまるが、手の平だけは特別で、早い刺激に対しても快を感じる特徴がある。だから触れる側の人は手を速く動かしても、自分の手で気持ちよさを感じるため、マッサージをするとどうしても速い速度で手を動かしてしまいがちである。しかし触れられる相手のことを考えると、やはりゆっくりした速度で触れる方がよいのである。
なるほど・・・!
手のひらの感覚は特別なんですね!だから、こちら(セラピスト)は「これで十分でしょ〜!」と思っても、背中や脚などのトリートメントを受けながら、もしかしたら受け手は「もうちょっとゆっくりでもいいかなぁ 」と感じるかもしれない。
練習、研修をしながら修正していくわけですが、このように研究結果で示されるととても納得がいきます。
「もっとゆっくりでいいよ」という曖昧な指導ですが、「秒速3cm〜10cmくらいらしいよ。だからなんとなく秒速5cmくらいをイメージして」と指導する先輩がいたら、「ちょっとこの人面倒くさい人だな」と思われるかもしれないので、個人的には自分の中の知識として役立てたいと思います(笑)。
その他にもセラピストとして役立つ知識がたくさん詰まっていました。
また書きたいと思います。
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