an’s diary ⚓︎

イギリスセラピー留学を経て、豪華客船で働く船上スパセラピストへ。海外生活の話や旅日記、美容・健康情報などを綴っています。

等価値交換 vs. 共同プロジェクト

 

社会派ブロガー&紀行文筆家のちきりんさん

その考え方や生き方などが大好きで出された本はほぼ全て、買って読んでいます。

 

自分自身がちきりんさんの影響を受けて大成功している人生、というわけでもないのでなかなかメンションしにくいものもあるのですが、今回リノベの本(『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』)を読んでいて、「!!!」となった章があったのでここに記しておこうと思います。

 

本はこちら↓

 

そこにはリノベに関することだけではなく、ちきりんさんの言葉をお借りすると「リノベ以外の生活でも役立つとても重要なコンセプト」が書かれていました。私は主にセラピストとして働いているので、それに関することとも言えます。

 

第3章の、リノベは客と業者の共同プロジェクトの部分(33ページ〜)。

タイトルにもさせていただいた、「等価値交換」「共同プロジェクト」という言葉が出てきます。以下、少し長いですが削ると分かりにくいので、本より引用させていただきました。

 

世の中の取引には、売り手と買い手が「等価な価値を交換する取引」「両者で共に創出した価値を分け合う共同プロジェクト型の取引」があります。

日常的なお買い物の大半は前者です。500円のお弁当と500円分の現金を交換する。3000円のセーターと3000円の電子マネーを交換する。いずれも等価値である2つのものを、売り手と買い手が交換しています。

それにたいして、売り手と買い手が共同して価値を生み出し、生み出された価値を両者で分け合うという取引があります。典型的なのは医療です。

医者は専門知識や技術の提供者であり「稼ぐ人」です。一方の患者は、病気やケガを治すため、医者にお金を払います。しかしそれは患者が「健康をください」と言ってお金を払い、医者が「はい、2万円です」といって健康を渡すような、等価値交換型の取引ではありません。

患者は自分の体の状況をコト細かに説明し、医者は問診をしたり検査をしたりして病状を判断、薬を出したり手術をしたりします。しかし、「医者は専門家なのだから、患者が情報提供をしなくても病状を理解できるはずだ」などと言って、自分の生活習慣や症状を正直に話さなければ、医者であっても正しい診断はできません。

もちろん、処方された薬を飲まない、食事制限を守らない、もしくは手術後に指定されたリハビリをおこなわないといった態度をとれば、いくら大金を払っても健康は取り戻せません。医療というのは医者と患者が共通の目標に向かって共に努力して価値を生み出し、その価値を医者は収入ややりがい、名声や経験値として、患者は健康として分け合う共同プロジェクト型の取引なのです。

スポーツジムや英会話学校に通うのも同じです。「英検1級の英語力ください」「20万円になります」みたいな、等価値交換型の取引ではありません。「20万円払ったのに全く話せるようにならなかった」と文句を言う人はそれが理解できていないのです。

 

まさに!

エステも同じ。「痩せるために30万円払ったのに全然痩せない!」と文句を言う方、絶対いるはず。エステのマシーンだけでは痩せないよ・・・きちんとしたエステサロンは食事指導や運動などのアドバイスもしているはず。サプリは怪しいものも多いので注意が必要。最近は少ないですが、「これで絶対痩せる」と謳って広告を出しているところは誇大広告になってしまうので、それはそれで問題。

他にもたるみが全然改善されないとか、シミが全然なくならない、とかも。この場合は即効性や見た目で明らかに分かる効果を求めるのであれば、医療に頼ってください、となるのでその場合の医療は等価値交換になるのかな。信頼できる医療機関、先生にボトックスなどのお金を払ったらシワは一時的に消える。でもニキビ治療などは時間がかかったり、遺伝や生活習慣が関係するものもありすぐに効果が出ない場合もある、なのでこの場合は共同プロジェクトになる、など。

 

エステや美容の世界でもこの共同プロジェクト、と言う話は通じるものがあるなぁと思いました。

 

腰痛や肩凝り改善、むくみなどに関しても同じことが言えます。慢性的な症状は食事や生活習慣の改善を求められると思うので、一度マッサージやトリートメントを受けたからといって、症状と完全にサヨナラするなんてことはほぼあり得ません。

「受けた後は良くなったのにまたすぐ戻っちゃった」、そんなことは分かっているけどまたご来店してくださる、という方は何か別のものに価値を感じてくださっているからだとも思います。

 

鍼灸も、一度だけでなく何度も治療を行うことによって効果が得られた、と言う話はよく聞きます。

(鍼灸に限らずですが)1回の治療で劇的に良くなる!ということもありますが、それはお客様、患者様が症状などの状況を正確に事細かに説明し、施術をする担当者の知識と経験、腕が全て揃った時という話を聞いたこともあります。そうでなくてもたまたま治っちゃった、なんてことももしかしたらあるかもしれません。どんなベテランの方でも万人に、同じように毎回劇的な効果を出す、ということは非常に難しいことだと思います。

 

ちきりんさんの本ではこのように続いています。

このコンセプトについては、ごく自然に理解できる人と、なかなか理解できない人がいます。前者の多くは、自分自身も共同プロジェクト型の仕事をしている人です。

 

確かに、私も昔はすんなり理解できなかったかもしれない。「自分も頑張らなきゃだよね」と頭では理解しつつも「あんなに払ったのに」と文句を言いたくなる気持ちがわからないわけでもない。でも今は、自分が同じように模索しながら仕事をしている側なのでこの理論がすんなり理解できました。

 

例として挙がっている医療関係者のお仕事と比べると私のようなセラピストの技術と知識は本当に微々たるものですが、目の前のお客様に向かう姿勢は同じように真剣に、プロ意識を持ってやっているし、そういうセラピスト、エステティシャンも多いはず。

限られた時間内でお客様のニーズを汲み取り、メニューを組み立て、ご満足いただけるように自分のその時にできる最高のパフォーマンスができるよう努める。

だからといってはなんですが、昔担当していたお客様のことをたまに思い出して、「今だったらこんなアドバイスもできるのに!」と思うことも。新たに勉強して知識が増え、昔の自分の力不足に反省する。逆に自分を通してお客様が少しでも変われたときは、自分のことのように嬉しい。

 

気を付けたいのは、抱える症状、問題によっては、お互いがどんなに頑張ってもなかなか結果がついてこない場合が世の中にはある、と理解することもとても大切だと思います。難病、不妊治療など、本人にしかわからない辛さがある。人に言えないかもしれない。世の中にはそういった方がいる、自分の身近にもいるかもしれない、と心に留めておくことは大事だな、と日々感じます。

 

 

今回この本を読んで、リノベも共同プロジェクトになるんだ、ということは正直予想外でした。ちきりんさんが本を書いた理由の一つに「リノベ会社のスタッフの方は、自分で言いにくいならぜひこの本をお客さんに勧めてください。このことを理解してもらえたら、仕事が一気にやりやすくなるはず」とおっしゃっていて、なるほどなぁと感じました(さすがの視点の持ち主)。

 

世の中には自分の知らない「共同プロジェクト型の職業」 がまだまだたくさんある気がしてきました。この理解がもっと広まると、店員さんや担当の方々に理不尽に横柄な態度を取る人も減る気がする。そんなことも気付かせてもらいました。

 

まだ本は途中の段階ですが、近々でリノベをする予定はなくても学びのある一冊。

 

 

ちきりんさんの本、どれも素晴らしいけど1番のお気に入りはこれ。文庫版も出ていてお求めやすくなっている!

 

 

大好きすぎて3回は読んだ。でも友達に貸したら返ってこない・・・のでいつかもう一度買うかも。旅好きな方はマストと言っても過言ではない一冊。