ローズの精油はなぜ高いのか
先日アネルズあづささんのオンラインサロンにて、ブルガリアのローズ農家さんのお話を聞きました。
なぜローズはこんなにも高価なのか?
希少・貴重と言われるのか?
アロマセラピーや香りに関わるものに携わった人なら、一度は生じる疑問。
「採るのが大変だから」
文字でひとことで言ってしまうのは簡単。容易に想像できてしまう答えだけれど、何がどう大変なのか、そこまで深く、深ーく、具体的に追求したことは正直ありませんでした。
ローズの価格例
まずこちらのローズの精油(Rosa damascena)、 1mlで6,820円、5mlで33,000円です。
ローズ(Rose Otto) | アロマセラピー | ARTQ ORGANICS(アロマティーク オーガニクス)公式オンラインショップ
比較対象として、同じメーカーのラベンダー(Lavandula angustifolia)は5mlで2,310円。
ラベンダーハイアルティチュート(Lavender) | アロマセラピー | ARTQ ORGANICS(アロマティーク オーガニクス)公式オンラインショップ
約14倍の価格!ローズがどれだけ高価なものかわかります。
このメーカーに限らず、私がよく購入しているKOBASHIでもローズ(Rosa damascena )はこのような価格↓
2.5ml 95.17ポンド (約12,000円)、5ml 183.14ポンド(約25,000円)※2020年6月25日現在のレート
これでも他メーカーよりだいぶ安い方だと思うのですが・・・同じく他の精油と比べても何倍も高い価格で販売されています。
ローズ農家さんについて
このたった1滴の精油を採るまでに、どれだけの人の手間と想いがつまっているのか。
そして1本の瓶に入った精油として私たち消費者の手に届くまでに、どんな工程を経て、どんな想いで選ばれたものなのか。
もう奥が深すぎて夢中で聞き入ってしまいました。
あづささんはローズに限らず、自分の足で世界中の農家さんを訪ね、良いと思ったものを選び続けている方。あづささんが書いている本の写真も、ご自身で撮影したものばかりだそうです(!)。
そんなあづささんが選び、現在取引をされているのはブルガリアにある一つの農家(この一つだけの農家から、というのも珍しいそうです。普通はワインなどと一緒で、共同組合のような、いくつかの農家が集まってできたものを取引するという方法が主流だとか)。
ローズの収穫は1年のうちにわずか1ヶ月間に集中して行われ、それがちょうど5月〜6月の時期だそうです。
収穫する方々はその時期になると農場のまわりに滞在し、収穫時は
手で一つ一つ摘み取ります
(機械収穫ができないため、手に棘が刺さってしまうこともあるとか!)。
完全歩合制ということで、摘んだ量によって賃金が決まることもあり、皆さん慣れた手つきですごいスピードで収穫されているとおっしゃっていました。
そしてその花びらだけを集めて袋に入れて運ばれます。ものすごく重いはずなのに、担当の方はまるで軽い物を持ち上げるように運んでいるそうで・・・!
腰を痛めそうだし手もボロボロだろうし、身体中痛くなりそう・・・とても過酷な状況です。
現在主に流通しているものは、水蒸気蒸留法で抽出されるRose Otto (Rosa damascena) 。
農家さんによって収穫方法や管理体制は異なるようですが、ローズは他の精油と比べても抽出量がとても少なく、必要な蒸留器の数、かかる時間が全然違う。
収穫時だけでなく抽出時も大変だということを知りました。
なぜ採り続けるのか?
人手と手間をかけて抽出されるローズの精油。
そこまで大変な思いをしながらも、なぜ採り続けるのか?
そしてなぜ、人はその香りに魅了され続けているのか?
その歴史は古く、本能的に人を魅了する力があったのか、なぜこんな大変な思いをしながらもやめないのか、成分に関してもまだまだ解明されていない点も多く、非常に興味深いです。
ローズの効能
様々な研究がなされている中で、一番よく聞くのは婦人科関連ケア。やはり女性と深い結びつきがあるのでしょうか。化粧品にも多用され、香りが良いだけでなくスキンケアとして皮膚への働きも期待できるといわれています。
肌に塗布する、という行為だけでなく、香りを嗅ぐだけで効果が得られるというデータもあり、もっと知りたい!と興味津々。
ここで効能について語ってしまうとキリがないくらい長くなってしまいそうなので、またの機会に。本やネット上でもローズの効能に関する文献は、研究自体が他の精油と比べても多く、たくさんある方だそうです。
ちなみにローズは1滴でもすごくパワフルで存在感のある精油なので意外とコスパは悪くない、ということも。
精油はそれぞれ香りの強さが全然違うので、ブレンドするときには割合(それぞれ何滴使用するか)が変わってきます。1滴で他の精油の香りを消し去ってしまうものもあれば、何滴も入れないとブレンドで引き立たないものも。まさに十人十色です。
本物と偽物の違い
なんとなく、ローズは良い香り、女性らしい、そんなイメージを昔から抱いていますが、実際に「バラの香り」として流通している安い偽物の香りも残念ながらたくさんあります。合成のものだったり、人工的に作られたものだったり。
そういった香りに慣れてしまうと、100%天然の植物から抽出された本物のローズの香りを嗅ぐと、逆に「これはローズじゃない」と思われてしまうことも。
私もイギリス留学時に、わくわくしながら届いたばかりの精油BOXを開け、何十種類もの精油を一つ一つ手にとり、ローズの香りを嗅いだとき、「あれ、ローズってこんな香りだったっけ?」と正直思った記憶があります。でもそれはきっと自分が偽物の香りに慣れてしまっていたから。もしかしたらあの時が、初めて本物のローズの精油を手に取った瞬間だったのかもしれません。アロマセラピーを学んでから気付いたのですが、香りの効能は主にその中の一つ一つの成分から発揮されるものなので、偽物や合成されたものを使用してもあまり意味がないかもしれない。それを知ったときは衝撃でした。
それから、ローズ、バラの種類は世界中にたくさんありますが、精油が取れるものは主に4種類しかないそうです。なので、お庭やバラ園などで咲いているバラと、この主に精油やハイドロゾルとして流通しているRosa damascena は成分も全然違うので、香りの強さや効能も違う、とのことでした。
ローズは単品だけでなく、化粧品や香水などにも多く配合され大変人気の高いもの。成分になるべく良い物を使いたい、とこだわりのある化粧品はその分高くなる、という理由もこの農家さんの話などを聞いて改めてよくわかりました。
たかが香り、されど香り
人気が高い、つまりお金になる、ということ。その取引額は想像以上かもしれません。
盗難に遭ってしまうという危険性もあり、管理や出荷体制はとても厳重だそうです。
いくらお金になるといっても、大変だからもう続けられない・・・
もしそんな農家さんが増えてしまったら、もっともっと希少になり、高級になってしまうかもしれません。
そう考えると、この1滴1滴が愛おしいというか、ますます大事に思えてきました。
そんな小さな瓶にそんなにお金をかけるの?と人によってはそう見えるかもしれない。でも別にそれでもいいと私は思います。
車にお金をかける人、お酒にお金をかける人、靴やファッション、アクセサリー、漫画や本、化粧品・・・人それぞれ。私は正直車には全く興味がなくて、誰が何の車に乗っているとか全然覚えられないし、車でステータスを感じることも特にない。お酒もこの前約半年ぶりに飲んだほど、特別な機会がない限りあまりいただくことはない。でも別にそれが好きで詳しい人のことを「嫌だ」とは思わないし、「理解できない」とも思わない。靴や化粧品をたくさん持っている方も男女問わずなんだかキラキラして楽しんでいるようですし、人それぞれでは?と。
ただ物は大事にしたいので、昔と比べて自分が不必要なものは買わないようになったし、買ったものはちゃんと使い切る、など無駄にはしないようには心がけています。
精油もそれと一緒で、自分のためにもお客様のためにも、それを使ってあげたい、と思って1滴を垂らす。
農家さんのお話を聞いて、ますますその1滴1滴を大事にしようと思いました。
他にもあづささんのお話は魅力的で、細かいことはたくさんあるのですが、全部ここに書き出すとかなりマニアックで長くなってしまうので、自分のノートに留めておきます(笑)。
いつか、私も農家さんを訪れたいなぁというのが一つの夢です。
本の紹介
あづささんの本より。先ほど述べたように、これらの写真はあづささんご本人が撮影したもの。日本語の本でおそらく一番情報量が多く、まとまっているアロマセラピーの本だと私は思っていて、もっと早く買えばよかったです。