an’s diary ⚓︎

イギリスセラピー留学を経て、豪華客船で働く船上スパセラピストへ。海外生活の話や旅日記、美容・健康情報などを綴っています。

アロマの歴史から考える、精油は本当に飲めるのか?

最近SNSをみていると、いわゆるマルチ商法と呼ばれる手口のアロマをよく見かけるようになりました。

そして、そのアロマはだいたい「飲める」と言われています。

 

アロマセラピーをきちんと勉強したことがある人は、安全性と注意事項を学ぶときに必ずと言っていいほど

 

※精油は原液のままの塗布や服用してはいけない

(ラベンダーやティートゥリーに関して、直接塗布してもOKという例外を認めるような文書や説明などが一般的に広まってはいますが、基本的には上記のように)

 

と習うと思います。

 

SNSの中でも、ツイッターではすぐに批判されているので、使用者は主にインスタ(フェイスブックもかな?)に集まることが多いようです。

 

 

主にD社とY社が有名ですが、どちらの使用者にもお会いしたことがあります。

勧誘はされませんでしたがレモンの精油などを食事に取り入れているようでした。奇跡のアロマと呼んで(!)。

 

社名が気になる人は「マルチ商法 アロマ」などとグーグル先生にでも聞いてみてください。すぐに出てきます。そしてその社名を #○○(社名を入力) とインスタで見てみてください・・・

 

 

「え、本当に飲めるの?飲めないんじゃなかったっけ?」

「いやでもヨーロッパでは飲めるって聞いたことがあるような・・・」

 

 

一度アロマの歴史・ハーブの歴史をかなりざっとですが簡単に振り返ってみます。

 

 

 

◆アロマセラピーの歴史

 

・古代エジプト

イギリスやフランスから?とも言われていますが、現段階で確認できる最古の記録では、実は精油は古代エジプトから使用されていたと言われています。

壁画やヒエログラフには精油を使っていた生活が絵で表現されており、ミイラ作りでも内臓にハーブや薬草を詰めたり、包帯を精油に浸すなどして使われていた(防腐作用)

 

 

・世界遺産のお風呂、イギリスのBath(バース)

古代ローマ時代に、入浴をしながら香油のボディマッサージができる専用の部屋が設けられていた(こんな時代から、身体の循環を良くして、マッサージを受ける!という習慣があった)

 

バースに行ったときの記事 → 世界遺産の街、バース

 

 

 

フランキンセンス(乳香)+はちみつを混ぜたパックで顔や身体をケアしていた

(文献として残っているそうですが、ここでは文献名不明です、すみません)

 

 

17世紀後半から、化学薬剤の開発に成功

化学薬剤が開発されるまでは、ハーブが病気や感染予防するものとして修道院の庭で薬草を栽培・売買していた

(南仏ブロヴァンスにラベンダー畑を見に行った時に、実際に修道院の庭にラベンダーがある姿を私もこの目で見ることができました。下に写真)

現在ヨーロッパではこういった名残が強く、今でも薬局ではハーブや精油が医学の一部として販売されているところもあるようですが、あくまで同じように共存して進むべきものとされている。(予防・治療・改善)

 

近代に入り、ルネ = モーリス・ガットフォセ、ジャン・バルネ、マグリット・モーリー、ロバート・ティスランドらの功績によりアロマがこうして広まるようになってきました。彼らに関してはアロマの本などを読めばだいたい書いてあるのでここでは割愛します。

 

※参考

セラピストのための「セラピスト検定ベーシック編」より、アネルズあづささんの「アロマセラピーの基礎」通信講座

 

 

 

◆ハーブの歴史

 

メディカルハーブという言葉もありますが、

ハーブ = 医薬品 ではありません。

ハーブのもっている成分を利用して、心身の不調の改善や病気にかからないように予防することを目的に使用します。

 

アロマの歴史でも記したように、 そもそも昔は今と同じような「薬」がありませんでした。

 

 

古代

薬草魔女と言われる薬草の知識を持ち、上手く使いこなす人がいた。

「悪魔にとりつかれた」病気を治す、という呪術的な考え方。

昔の映画や本を見ると、そのような話を聞いたことがあると思います。

非科学的な時代。

 

古代ギリシャ

ヒポクラテス(医学の父)は、ハーブを使いながら治療を行ったそうです。

「体液病理説」(体液のバランスが崩れると病気になるという考え)に基づき、267種類の薬草を用いて科学的医学を確立。

 

古代ローマ

ヒポクラテスの体液病理説をガレノスが継承し、発展させる。

またクレオパトラはローズ好きとして知られ、ローズの花びらをオリーブオイルにつけ込み、その抽出油を身体に塗り多くの男性を虜にしたというのも有名なエピソード。

 

 

・中国 -『神農本草経』

300年頃の中国最古の薬物書といわれ、365種の薬草が記載されている

 

・インド - アーユルヴェーダ

 

 

10世紀

・ヨーロッパでは特に何の書物も残っていない

・アラビア - イブンシーナというアラビアの医学者・哲学者、精油の蒸留法を確立したと言われている人物

ヨーロッパとアラビアの交易があり、伝わったといわれている

 

中世

教会の修道士(女)が治療を行う(修道院医学

例)修道院の中庭でラベンダー栽培

→ 疫病(コレラ・ペスト)の治療、ラベンダーの芳香蒸留水

(当時の修道院は、祈りの場であると同時に、貧しい人々の病院のような存在であり、教会内の薬草園のハーブを使って病人の治療を行っていた )

 

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写真は2014年の南仏旅行時のセナンク修道院とラベンダー(満開の姿はこの時見れず・・・)

 

 

14世紀

ローズマリー = 若返りのハーブとして女王さまから人気(ハンガリアンウォーター)

元々は痛風、関節が痛むことに僧侶が勧めたものでしたが、皮膚がきれいに若返ったことでこう呼ばれるようになったといわれている(ただハンガリーの王妃の話なのか、また塗ったのか飲んだかなどは諸説あり)

 

15世紀

コロンブスがアメリカ大陸を発見

珍しいハーブやスパイスを探し求めに皆ヨーロッパから各地に船出(大航海時代

エキナセア、マレイン、コカなどが新大陸からヨーロッパへもたらされた

 

16世紀

ハーブスペシャリスト(ハーバリスト)が病気の治療

 

19世紀

薬の時代台頭

ケシ → アヘン → モルヒネ

ハーブから化学成分を単離して合成の薬を作る時代がやってきた

 

20世紀

抗生物質を使用するようになった

結核やチフスなどを恐れなくなったが、薬害・副作用が報告されるようになる

ハーブやアロマセラピーなどその他の療法を併せて使う時代(現代)

 

※参考

セラピストのための「セラピスト検定ベーシック編」より、三上幸江さんの「メディカルハーブとビューティーケア」通信講座

 

 

ここで間違ってはいけないのが、

「昔は薬なしでやってきたんだから結局やっぱり自然のものが一番!」と意見が偏り過ぎてしまうことです。

昔は薬がなかったからそうするしかなかった、でも今は医学の発達によって疫病などで大量に人が亡くなることが防げるようになってきた時代。

 

私も正直、できる限り薬や化学物質は摂り入れたくない派です。頭が少し痛くてもすぐには頭痛薬は飲まないし、船酔いも心配になる仕事ですが、なるべく酔い止めは飲みたくないと思っています。(辛いのを我慢して、仕事に支障が出るのも周りに迷惑をかけることになるので、その場合は薬に頼るなど、もちろん臨機応変に行動します。)

 

でも、高熱でインフルエンザ疑惑があるのに病院に行かないということはないし、疑いがあるのに無理して電車などの公共交通機関を利用し、出勤しようとは思いません。

化学物質=害・悪いものと捉えて全てを拒否してしまうと、それはそれで危険なこと。自分はそれでも良いかもしれませんが、万が一電車で隣に座っている妊婦さんにうつしてしまったら・・・?同僚やお客様にうつしてしまったら・・・?

インフルエンザに限らず反ワクチンに関しても。

 

今、子どもが痛い痛いと泣いているのに、病院に行かずにアロマやハーブで治そうとしている方がいるそうです。アトピーは、本当にアロマだけで治るのでしょうか。悪化してしまった、というケースもあるようです。

 

また、ペットの犬や猫は私たち人間よりも何倍も嗅覚が優れていると言われているので、私たちが「いい香り」と思うものを同じように「いい香り」と思うかはわかりません。

それなのに、直接塗布してそれをSNSに上げている人もいました。

動物虐待じゃ、と同じペットを飼う者として激しい怒りを覚えました。

生活の木とかに行くと、「ペットがいる家ではディフューザーの使用に気をつけましょう」などときちんと注意書きがされています。(※下に追記あり)

 

 

精油を飲むか、また直接塗布するか、最終的にはあくまでも自己責任

 

東洋医学にも西洋医学にも、どんな療法にも良い面・悪い面(苦手な面)があります。

何事も偏り過ぎるのはよくない、

あくまでも予防・治療・改善の面でそれぞれが共存して進むべきもの、という考えに私は賛成です。

 

 

ただ専門的に学んだことのない、知識の乏しい人にビジネス目的で怪しげな商法で洗脳し、親のエゴでまだ幼い子供の病気や怪我を病院に行かせないでアロマで治す、とかペットにアロマ、という信じられない光景がSNS上でシェアされている状況を見ると、抵抗できない人・動物にそれを強制するのはどうなの?と思ってしまいました。

 

そして何より、最近私は「アロマセラピー」と聞くと怪しいものにさえ思えてしまう自分がいるのがすごく嫌です。

というかアロマっていつからキラキラ女子みたいなものになってしまったのか・・・

 

 

上にも書きましたが、あくまでも自己責任。人は人なので私には関係ない。

ただ迷っている人がいて、「これって正しいのか?」と思ったときに一度もしこの記事が目に止まったら、自分の頭で考えるきっかけになればと思い書きました。

 

また、勘違いしてほしくないのは、D社やY社の精油が完全に悪いと思っているわけではありません。そんなに詳しくはありませんが、精油としてはもしかしたら優れているのかもしれません。ただそれを信じ込み過ぎ、よく知らないのに人に飲ませたり、薬やワクチンを断固拒否しすぎることは良くないのでは、と思う立場です。

 

植物の力って、自然だから優しいというだけではなく、かなり強くはたらく可能性があるものだからこそ、禁忌事項もあるし慎重に扱ってほしい。 

 

 

私もまだまだ日々勉強中です。

 

 

 

<ペットとアロマに関する追記>

(2020年6〜7月、ARTQ・アネルズあづささんのオンラインサロン、勉強会の内容より)

 

ペット(主に犬・猫)とアロマに関しては、精油が全くNGという明確なエビデンスは現時点でないそうです(芳香としての話)。これは知りませんんでした。妊婦さんに関してもですが、エビデンスのない情報が一人歩きしている部分もあるのかも。

 

ただ人に対しても、香りを楽しむ上で「心地良いと思うか」という適量があると思うので、苦しいと思うほどの過剰量を使用してはいないか、また直接塗布してしまう、餌に混ぜるなど、使用方法が適正かどうか、などそれは別の話だと考えます。私はそんな使用方法は絶対にしてはいけないと個人的に考えます。

 

ディフューザーなどの使用は、位置や使用量などに気をつけるべきことはあるかもしれませんが、適度に心地良い香り程度であれば、問題ないかもしれません。

(もし本当に香りが完全にNGという場合、カレーなどの匂いの強い料理、コーヒーなどの飲み物、柔軟剤、など日常で香りが全く使用しないということは難しい、また八百屋さんなどお店で飼われている犬や猫はどうなる、などの疑問も・・・たしかに。)

 

ペットとアロマ、ということに関して、何か起こった時に、そもそも論として

・その精油は純粋なものなのか、合成のものなのか

・量はどれくらい使用していたのか、などの使用方法

 

 

この2点は非常に重要な確認事項かと思うのですが、実際のところそれすらわかっていないそうです。

 

ちなみにうちの実家の犬は、16歳でまだ元気。室内で飼っていて、料理の匂いには常に晒されています・・・。もちろん精油などを直接塗布したことはないですし、ディフューザーをガンガン近くで使用する、なんてことはありません。

 

 

 

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